卯月の恋
そのまましばらく見つめあったあと、玲音は私の唇にちゅっ、と一回だけキスをした。


子どもみたいな、あるいはアメリカ人の挨拶みたいなキス。


それから、玲音はぱっと私から離れると、また背中を向けてベッドの端に戻っていった。



その背中を見ていたら、この人が愛しくて愛しくて、初めて人を食べちゃいたい、とさえ思った。


玲音がくれたかわいいキスが嬉しくて嬉しくて、どうしようもなくて、涙が出た。


「れおぉ…」


私は生まれたての子猫みたいに玲音を呼ぶ。


「…なに」



「ぎゅうって、して」



ぎゅってして。
この先、こんな気持ちにさせてくれる人はきっと現れないから。
玲音じゃなきゃ無理だから。

だから、ぎゅってして。
この恋が実らなくても生きていけるように。
この先、何があっても私が生きていけるように。

ぎゅってして。
そしたら、私はきっと大丈夫だから。


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