卯月の恋
ややあって、玲音は私の方に向き直った。
それから、腕をのばして私を抱き寄せる。
玲音の腕に頭を乗せて、胸に頬をくっつけたら、不思議と懐かしい気持ちになった。
今日が初めてじゃないみたい。
まるで何年も何十年も、毎晩こうして寝ていたように。


「落ち着く」


嬉しくなって私が呟くと、玲音がうん、と小さく頷く。


「あったかい」


「うん」


「玲音?」


「なに?」


「あのね、好き」


「うん」


「おやすみなさい」

「おやすみ」




私は目を閉じた。
閉じた拍子に、涙が一粒、つぅーっと流れ落ちた。



心から好き。



あなたが私を好きじゃなくても。

玲音。
私に恋を教えてくれて、
ありがとう。


< 72 / 105 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop