卯月の恋
この世で一番幸せな瞬間は、好きな人の腕の中で目が覚めた時かもしれない。


カーテンの隙間から差し込む太陽の光で私は目が覚めた。


まどろみながらも、玲音の体温はずっと感じていた。
玲音の体は大きくて、守られてるみたいだった。


玲音が寝る時とほとんどなにも変わらずに、私を腕枕して空いてる腕を私のお腹の上に乗せた格好で寝ているのを見て、この日が私の人生の山場かもしれないな、なんて思う。


この先、私の人生がまるでウォータースライダーみたいに急に下り落ちたとしても、神様に文句いったりしない。


私は、玲音の夢を見ていた。
二人で、昔実家にあったかき氷をつくる機械で氷を削っていた。
かき氷器はペンギンの形をしていて、頭のところに、くるくる回すハンドルがついていた。

私と玲音は交代でそれを回してケタケタと笑った。



ただ、それだけの。
穏やかでかわいい夢だった。



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