卯月の恋
しばらくそのままで玲音の寝顔を見ていた。

初めて、こんなに間近で男の人が寝てるのを見た。
玲音の寝顔は平和そのもので、あまりにも無防備だった。


私も玲音のこと、よく知らないけど、玲音だって私のことよく知らないくせに。

もしも、もしもだよ?
私が女盗賊団だったらどうするんだろう。
起きたら、金目のもの、全部消えてるかもしれないよ?

なのに、どうしてそんなに安心しきった顔で寝ているの?

つぅーっと涙がこぼれて、耳の横をくすぐりながら流れていく。

玲音といると泣いてばかりだ。
悲しいからじゃなく、寂しいからでもなく、愛しくて。
愛しくて、私は泣いてばかりだ。


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