卯月の恋
「すみれちゃん」


エレベーターに乗ろうとしたら川崎さんに声を掛けられた。

「秦野さんは?」

「ちょっと遅れるみたいです」

「じゃ、一緒に行こっか」


にっこり笑う川崎さんの笑顔を見て、少しホッとする。


「良かった。川崎さんがいて」


ベイサイドホテルなんて、今まで行ったことないし。

初めての場所に一人で行くのは心細い。
子どもみたいだけど。


「…そんな嬉しそうな顔されたら、まじになるよ、俺」


「え?」


思わず川崎さんを見上げたら、川崎さんはぷいと横を向いて、なんでもない、と呟いた。



< 90 / 105 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop