卯月の恋
電車を降りると、湿った風が吹いていた。

海からの風だ。


ベイサイドホテルは駅から歩いて五分くらいの場所にある、背の高いビル。

同じようなビルが他にも何棟か建っていて、その中にはオフィスビルもある。


「こんな海の近くで働けたらいいですねぇ」

夜の海を見ながら、私がそう言うと、川崎さんは、ははっとおかしそうに笑う。

「すみれちゃん、泳ぐわけじゃないんだから」


確かに。
ビーチじゃないんだから、泳ぐわけには行かないけど…。

でも、こんな人工的な海でも、近くになるだけでなんだか癒される。



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