卯月の恋
すぐ近くでコンクリートの岸壁に波が当たっては砕ける音。
遠くからは船のボーボーという低いエンジン音が聞こえる。


等間隔に立つ背の高い南国の木が風で揺れている。


私と玲音は海沿いの道を黙って歩いた。

何を話していいのかわからずに。


夜の海に目をやると、船の灯りが遠く見える。


繋いだ玲音の手のひらは暖かくて大きかった。


玲音がいて良かった。

本当にこの世から姿を消しちゃったかと思ったから。
それくらい、急に消えちゃったから。

ここに玲音がいること、
それが私はただただ嬉しい。


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