君と二人で奏でる音



閉じていた口を開き、

新たに言葉を紡いでいく。




「…嫌いになんて、なれるわけないでしょ?」






へらっと、透に向かって笑って見せる。



相手には届かないように、
少しの皮肉も込めて。







「そっか」





透は納得したように頷いて、

考えるようにしたあと、もう一度私の目を見た。




それはまるで、瞳の奥を捉えるような
真剣な眼差し。


目を逸らそうとしても、どうしてもできなかった。






「なぁ、七海。



 …俺一緒に、とバンドを組まないか」









一瞬、彼の瞳はゆれた。




そして

私たち二人の間に響き始める、


かすかな音色が聞こえ始めていた。







< 10 / 32 >

この作品をシェア

pagetop