君と二人で奏でる音
閉じていた口を開き、
新たに言葉を紡いでいく。
「…嫌いになんて、なれるわけないでしょ?」
へらっと、透に向かって笑って見せる。
相手には届かないように、
少しの皮肉も込めて。
「そっか」
透は納得したように頷いて、
考えるようにしたあと、もう一度私の目を見た。
それはまるで、瞳の奥を捉えるような
真剣な眼差し。
目を逸らそうとしても、どうしてもできなかった。
「なぁ、七海。
…俺一緒に、とバンドを組まないか」
一瞬、彼の瞳はゆれた。
そして
私たち二人の間に響き始める、
かすかな音色が聞こえ始めていた。