君と二人で奏でる音



ドクンドクン


心臓が、行ってはダメだと言っているような気がする。



でも、私の足は言うことを聞いてくれず
ひたすら前に進んでいくばかりだ。







人混みを掻き分けて、

やっとの思いで中心部につくと…






「と…おる?」






私はポツリと呟いた。



どこか見覚えのあるその姿に、思わずこぼれたのがその言葉だった。






呆然とその場に立ち尽くすと、

歌い終わった彼が立ち上がり周囲を見渡す。





そして。






一瞬だけ、私と目があった気がした。






気のせいかもしれない。




なのに、

胸が騒ぎ立てる。




ねぇ、お願い。



これは夢であってほしいよ。





この人が、"透"なわけはないから…







ライブが終わり客がある程度減っても、

私はその場から動けずにいた。




すると、私の前に大きな影ができる。




顔を上げると、そこにいたのは先ほどまでそこで歌っていた男だった。






< 5 / 32 >

この作品をシェア

pagetop