君と二人で奏でる音
「違います…」
私は嘘をついてその場から逃げようとした。
でも、彼の腕を掴む力が弱まることはなくて。
「嘘つけ、七海なんだろ?」
ふいに顔をのぞきこまれる。
「…ッ」
そんな顔、しないでよ。
私と透は、もう終わったはずでしょう?
君を見ているだけで、あの日の出来事を思い出していた。
立ち直れたのは、あの人に恋をしたから。
でも、それも気づけば終わってしまって。
「やめて、離してよ…」
私の声は震えていて
頬を温かいものが伝っていく感覚があった。
透は私の様子を見て一瞬驚いた顔をする。