イケメン無愛想S男子と契約を
.......美里は本気だ。
「私何もしてないけど?」
「曽良くんと付き合ってるじゃない?私が見たかったのはこんなあんたじゃない。わかるでしょぉ?」
腕組みをして廊下の壁に偉そうにもたれかかる彼女に私はため息をついた。
「あんたが告白しろって言ったじゃない。」
......私のお父さんとお母さんは、彼女の会社に勤務している。
つまり、彼女がお父さんに言えば会社のことはお茶の子さいさい。
私の親をリストラしてほしいなんてこと、次の日には叶ってしまう。
「でもぉ〜あんたが付き合うなんて望んでなかったのわかんなかったの?」
「もちろん。私は美里の言葉、真意に受け止めたよ。残念な姿見せなかったよね?」
正直、美里と口喧嘩をしても勝てる。
小さい頃からそうだった。
美里と友達だったときも、彼女は一つ、ほんの少しだけ私より遅れていた。
そのほんのが、彼女にとって辛かったのかもしれない。
高校に入って美里の親の権力は私の親より大きいことを知り、美里は脅してくるようになった。
「お前まじ、家潰すぞ。」
「やれるもんならしてみたら。」
昔は親友
今は上下関係。
私は、美里と二人きりなときは、こんな感じで反抗してきた。
美里はいつも脅すけど、本当はそんなことしないって。
でも、3人対私の時は違う。
美里はクール女子よりも下。
とにかく、私が刃向かったら、クール女子は絶対美里にこの罰を決行させる。
だから、私は.......やっぱり彼に頼るしかないんだ。
悲しい。
情けないと思う。
美里に対してみたいにガツンと言ってやりたいと思う。
でも、クールな彼女は有言実行。
私の親は完璧に美里を通じてリストラに追い込まれる。
「えーなめてるよね?わたしのこと。」
「...もういいでしょ。何が言いたいの美里?」
私は、彼女の横を通り過ぎようと足を進めた。
もうこの話は終わりにしなきゃ、授業が始まって彼に話すことができない。
少しでも話したいのに。
「ハ?今の私本気だから。お前の家がちでぶっ壊すぞ。」
グッと胸倉を掴まれた。
口を悪くした彼女の目は、ギラギラと燃えていて私を睨みつけた。
「や、めてはなして。」
.......始めて美里を怖いと思った。
胸ぐらを掴む力は増して、首が閉められる。
美里は私よりも身長が大きい。
力で対抗できる相手ではなく、
段々と手の先が動かなくなる。
授業開始まで数分だからか、人がここを通る気配がない。
「はなし...て美里」
「馴れ馴れしい声で呼ぶんじゃねぇよ。調子乗んなよブスが。」
太い低い声がわたしの脳にかけめぐる。
「......美里...はなして」
「うぜぇだまれよ。どうせ曽良くんに泣いて土下座して無理やり付き合わせたんだろ!?そうだと言えや!!」
「ち、ちが」
段々と彼女の力は強くなってほぼ、私の首を絞める状態に変わった。
どうして.....いつもとちがう美里に困惑するしかなかった。
ただ、謝りたくはない。
ごめんなんか絶対いいたくなんかない。
「口答えすんなッ!!!」
さっき、彼に言われた言葉が今度は美里に言われてしまった。
大きくそのセリフは廊下に響いた。