イケメン無愛想S男子と契約を
顔を真っ赤にさせてほおに手を当てるその仕草は
昔からの美里の


照れた癖だ。





「...いいよ。別に。好きでいても。」



"仮"の彼女である私が
何偉そうに上から言ってるんだろう。


だけど、焦りがあるのは確か。





もしかしたら、


私より、美里の好きは大きいのかもしれない。

今はそうじゃなくて、好きの量が私より小さくても


曽良さんと関わったらもっと好きになっていくじゃん。


私を越したらどうするの?


結論のわからない不安が
余計わたしを悩ませる。




美里は私の好きよりはるかに上をいっちゃうんじゃないかって。


だって...曽良さんを知れば知るほど
もっと好きになっている私がいるんだから。




やだ。


なんかやだ。



なんかじゃない...すごく嫌だ。



曽良さんのあの笑顔とか
意地悪な声とか知ってほしくないと思う。




私だけが知る特権でありたい。







「な...にいってんの?本当に彼女だと思ってるわけ?」




「そうだけど?」




私があっさり答えたのが気に入らなかったのか

美里は私を睨みつけながら

近寄ってきて耳打ちでこういった。




「あんまり調子に乗るなよ。」




その低い声に身震いがした。




いけない。


こんなことで挫けたら
美里の思う壺だ。



もし親の権力のこと
会社のこと

そんなことをいってきて...





「お遊びはここまで。ねぇ?ゆり。」





ニタァっと骨格をあげ
三日月のように曲がった目で
不気味な笑顔を作った美里を見て



困惑した。




いつもと違う。


何かが違う。





「...何する気よ?」





私だって負けてられないんだから、

前みたいに曽良さんに助けてもらうことなんかできない。



ここは本来なら立ち入り禁止の屋上。




私がどうにかするしかない



しっかりしろ。



私!







「その余裕ぶった顔。嫌いなの。」




「私は今の美里が全て嫌いよ。」



あ、挑発しすぎた...?


やってしまった。



だけどそう悩んでも
もう遅いらしく、



美里の怒りはピークに達していた。




「曽良くんと話さないって約束してよ?」




「嫌よ。」



「は?曽良くんなんてきっとお遊びに決まってるじゃん!」



「そんなんじゃない!
そう思うならあんただって私に構わず遊んでもらえればいいじゃない!
曽良くんに話しかけれないくせに!」




ペラペラと言葉が出る。


その一言一言が、彼女を鬼に変えていく。



だからと言って私だって止まらない。




曽良さんが好きだから。


とられたくないし、仮の彼女をやめる気にもならない。



契約を果たすまで、私は曽良さんと話して話して


いつかは本当の彼女になりたいんだもの。



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