イケメン無愛想S男子と契約を

「.....泣いてすがってなにがしたいの?」



相変わらず無愛想に読んでいた本を折りたたんで彼は私に言った。



涙を止めたくても流れ出る自分に悔しさを覚えながら、それでもいいと、大きく体を曲げた。




「曽良さん......しかいないんです。私を救ってください。」




泣き寝入りする



そう決めて私は歩き出したけど、やっぱり惨めな自分がもう我慢できなくなっていた。



どうして私なの。
どうして私だけ?

どうしてこんなことができるの?


私が彼と付き合ったら彼女たちは、私を開放してくれる?



そんな事ない。

きっと影で私を苦しめ続ける。



だけどそれでもいい。

彼にすがるだけ。

それだけで、何か報われるかもしれない




「....救え?ハ?君の言ってることわかんないんだけど」



「お願い.....します。」




怪訝な顔を浮かべる彼に何も言えない。

ただ頭を下げて願うだ



「君の名前もクラスも学年も知らないし、泣いて告白みたいなされても、俺どうしたらいいかわかんないんだけど」



ごもっともだと思った。



「1年4組 中澤 ゆりです...」



そしてもう一度根気強く頭を下げて念を押した。




「....あぁ、そう。あのうるさいグループの。」



「ぇ?」



「中澤...知ってるよ。」



ニコリと笑顔を振りまいた彼に心臓が飛び跳ねる。




知ってる....?




「.....あの。」




「いじめられてる子だよね?中澤さんって四組に一人しかいないでしょ?」




ふっと鼻で笑われてたのかもしれない。


彼の余裕な顔に私はただ涙をこぼした。




いじめられて.....いる。


こんな人にまで知られているのか。



胸が痛くなって呼吸がしづらい。




できれば、知られてほしくはなかった。



私は、彼と付き合って彼のかっこよさを利用したかった。



「最低だけど...これから好きになるから」




「なにそれ、それって俺のこと好きじゃないってこと?」




「.....そう。です。」




小さくそう呟くと、彼は少し黙って

私の目を強く見た




「.....じゃあ、お互い好きじゃない。付き合う意味ないよね?」





きつく私を睨む目に
呆れたと
そう書いているように見えて



体が小さく震えた。



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