イケメン無愛想S男子と契約を
「....私と契約しませんか。」
彼は黙って静かに本を読み始めて
数分。
私は、その場で動くにも動けず彼の揺れるサラサラな髪に見入っていた。
私が、彼女たちに対抗できるのは
彼女たちが望んでいる私をあざ笑う結果の逆をつくこと。
「.....契約?なにそれ。気持ち悪いよ。」
何も笑うことなく、私への言葉を連ねる彼の口は無のままで、冗談なんてもんじゃない。
気持ち悪いよと言われたのは、紛れも無い事実で、彼の心。
「...わ、わた、わたしもおもいます。気持ち悪いって...だ、だけど、もう辛い。」
顔を歪ませてベンチから立った彼に
この辛さはわからない。
私は嫌われっこだ。
私の考え方、気持ち、発言はみんなとは異なる。
だからきっと、私は孤立する。
「....来い。」
ベンチにそっと手に持っていた本を置くと、彼はそっと私に手を握った。
「ぇ?」
「辛いんだろ。」
「.....っ!ん...ぅん」
「.....気持ち悪い。」
そう吐きつけると、彼は私を引っ張って中庭へと走り出した。
「ぇっと...」
「...君......中澤を見てると吐き気がする。いいから振りほどこうとすんな。」
「ぇ...だって」
「周りなんか見るな...いいから走れノロマ。」
綺麗な彼の後ろ姿に見とれて、我を忘れそうになった。
周りからしたら、近づくことも安易ではない彼と私が、一緒に走っていることが物珍しいのか
まん丸と目を開けヒソヒソとし始めた。
走り終えた時には見覚えのある光景で
うっと...気持ち悪くなった。
いつも私を傷つける場所。
「...中澤と付き合わせてもらってます。曽良です。
お友達さんとも仲良くなれたら...光栄です。」
彼はとびきりの笑顔で、君たちを唖然とさせた。