イケメン無愛想S男子と契約を


.......言えない。



そう、言えないんだけども




「...どうした。何固まってんだよ。理由は?ほら。」


目を細めた彼が私を見下ろして脅してくる。





「...そらしゃん。わちゃし、しゅきゅかみょ」





「は?」




この気持ちはなんだ?


そう思い始めて、口がとんがったままの私は
考えた。



そして考えて10秒


ピンと頭に浮かんだ二文字の言葉




「なにいってんの?」



「しゅきゅかみょ」


てんてんてん、と時は過ぎて
彼の目は少し大きく見開かれたような気がした。



「........いい。聞かなかったことにする。じゃ」





すっと、彼は私の顔をから手をどかすと靴を履き替えてそそくさと廊下を歩き出した。




そう。


私が髪を下ろした理由。



かれにドキュンとときめいた理由





....曽良さんがすきなのかも。





「やばい......やばいかも。」





ほおに手を当て痛みを抑える。



痛いと感じるのは夢ではない。
この感情も夢じゃない。





「曽良さんっ!!!!!」




素早く私も靴を履き替え、彼の行った廊下を走り出す。



だけど、数メートル行ったところで彼が前に歩いていないことに気が付いた。



あれ、確か彼のクラスはこの廊下を行った先だよね?





んー。どうしよう。


彼に話さなきゃ。


好きになったから、そのことも踏まえて仮の恋人でいてくださいって。



なんかおかしな事だけど、きっと彼は私より頭もいいし、回転も速いし、余裕だから


私が好きってこと言わなくても明日にはばれちゃうと思うんだな。


っていうかもう、さっき言っちゃったし...。


それでも、あれが聞き取れたかどうかは分かんないから...















「ねぇ。」




どうしようと、ひとりでその辺をさまよっていた私に嫌でも聞き覚えのある声が耳に入った。




「......なに。」


最悪の展開。


「やだぁ〜そんな怖い顔しなくてもぉー」



また、耳を覆いたくなるような気持ち悪い声を発した彼女は、今日は1人のようだ。




「...周りのみんなは?どうしたの」




彼女の名前は、美里(みさと)



一人でくるってことは........
何か良からぬこと考えてるんだ。



先生にお世話になっちゃう厄介ごとは起きる前に、あのクール女子が止めに入るし、



自分が世界一可愛いと思い込んでいる美里だけど、傍観女子のかわいさには勝てない。
きっと、隣に居られるだけで美里の発言の説得力が下がるんだろうな。

『自分が一番可愛いんだから。調子乗んなよブス』って言葉、傍観女子と一緒の時は言ったことないし、自分でもわかってるんだと思うし。



私に堂々といじめをするってことかな。




「ゆりちゃんと〜ふたりで話したい気分なのぉ〜屋上いかない?」




ほら、かなり嫌な予感。



「ごめん、私急いでるの。」




私は、彼に言わなきゃいけない。

そして早く、好きなこと聞き出して契約を成し遂げなきゃいけないの。



こんなとこで.....




「じゃあ...どうなってもいいの?ゆりの家。」




< 9 / 25 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop