いと。
いつも気遣ってくれている薫にそんな風に言わせてしまうなんて。
その顔は苦しそうに切なそうに歪み…、声の響きには後悔が滲んでいた。
私は、もっと強くならないといけない。
このままでは、心を壊した母ときっと変わらない。
薫のそばでずっといたいなら、それ相応の強さと相応さを持たないといけないんだ。
手を伸ばし、私を見下ろすその頬に手を添える。
「………薫。ごめんなんて言わないで。
私、あんな奴に振り回されないくらい強くなるから。
薫が心配しなくて済むように…強くなるから。
こんな姿じゃ説得力ないけど…、頑張る。
頑張るよ。」
起き上がれない身体でこんなこと言っても仕方ないかもしれないけど、今の私はそれしかないんだ。
「…………愛。大丈夫。前にも言ったろ?
愛は十分強いよ。でも…そうだな。俺のために、自分をもっと大切にして?」
背中を撫で、静かに囁くように薫はそう言った。
「俺の大事な愛を、愛にも大事にして欲しいんだ。いいね。
……とにかく今は、体調を戻すよ。仕事は休めるんだろ。
仕事できるようになるまでは俺がずっとそばにいる。
そうさせて?俺に…君を委ねて。」
いつかのセリフに想いを重ね、軽く淡く、羽根で擽るようなキスをくれる。
やっぱり、どこまでも優しい薫。
たったひとりの『愛しいひと』を手にした私は、それだけで強くなれる気がした。