いと。

数日後、入院のために彼女が詰めた荷物の入った鞄の奥で見つけたのは彼女の日記だった。

「これ…は?」

そこに書かれていた事実。悩み。苦しみ。

○月×日
どうしよう。昨夜の記憶がない。あの人は私に何をした?

○月×日
妊娠した。どうしよう。総一郎さんは「子供はまだ作らない」と言っていた。じゃあこの子はあの時の?

◯月×日
妊娠3ヶ月目。いっそ流産してしまいたい。そう思ってわざとタンスにお腹をぶつけてみたけど、この子は出て行ってくれない。

○月×日
悪阻が酷い。総一郎さんは優しく気遣ってくれるけどそれが辛い。あなたの子じゃないかもしれないのに。

○月×日
妊娠5ヶ月目。あの人に会った。「その子が似るのは彼か?俺か?」と言われた。あの勝ち誇ったような顔。やっぱりそうなんだ。

○月×日
妊娠7ヶ月目。どうしよう。お腹がどんどん大きくなる。総一郎さんに知れたら、私は捨てられるだろうか。

○月×日
嫌だ。産みたくない。誰か助けて。総一郎さん、ごめんなさい。

○月×日
産みたくない。産みたくない。産みたくない。誰か、いっそ殺してほしい。

○月×日
いやだいやだいやだ。誰か、だれか、そういちろうさん、そういちろうさん。

詰まっていた想いは、決して私には語られることがなかったものだ。

「…っ!?…うそ……だろ………。」

元来繊細な彼女の心を崩壊させるには…十分すぎるほどの地獄だった。


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