いと。

産まれた。

それが愛の罪の全てだ。

血液型は京香と同じだった。

日記に書かれていた日に何かあったとするならそれは、レストランの食材の交渉をするため地方に赴き泊まった日のことだ。

でも…父親がだれか、誰を憎めばいいか、真相は京香が記憶を取り戻さなかった今、知る術はもはやない。

あの日一緒に連れて行っていたなら……こんなことにはならなかったのに。

もしかしたら今頃、本当の子供の結婚を祝福していたかもしれない。

怒り、憎しみ、苦しみ、悲しみ、後悔。それらに押しつぶされそうな心のバランスを取る方法は愛を憎むことでしかなかった。

育っていく過程でその顔立ちや仕草が京香に似ていると思うたび苦しかった。


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