いと。
空港で飛行機を降りると待っていたのは秘書の男だった。
黒塗りのエアコンの効いた車に乗り込み夕方の蒸し暑い街中を通り会社へと向かう。
…そうだな、あの頃はまさかこんなに大きな組織になるとは思わなかった。
ただ、家族でかこめるあったかくて美味しい食の場を作りたかった。
京香と一緒に……。
好評だったオムライスのお子様ランチを愛に食べさせることはなかった。
今ではもうキッチンに立つことすらない。
作る喜びもとうに忘れた。
いつかまたそれを思い出す日は来るのだろうか。