いと。
「……っ!」
思わず固まってしまった私に気づいたのか、薫に続いて店内に入ろうとしていた女性がチラリとこちらを見る。
「……!」
その女性は確かに、私に向けて満面の笑みでにこりと笑った。
あれは…………薫子ちゃんのお母さんだ。
目の前にあった現実に吐き気すら覚える。
答えはもう、聞きに行くまでもない。
………なんだ、薫の口から聞くまでもないじゃない。
私がずっと温めてきた薫のそばに私じゃなくて彼女がいた。
それだけで、十分だ。