いと。
あの子が薫の子供だと確信した翌日、私は薫の店に向かった。
ーチリンー
「いらっしゃ………愛?。」
薫は、ちょっと驚いた顔をしていた。当然だ。時間もうだいぶ遅い。
「来ちゃった。薫のお酒、飲みたくなって。いい?」
「もちろん。……座れよ。」
「ありがと。」
なんとなくぎこちないのはお互いがいろんな気持ちを抱えてるからだろうか。
「ごめんな、連絡しなくて。バタバタしちゃってて。」
申し訳なさそうな薫はふわりと、頭を撫でてくれた。
何を察したのか、雄太君はそっと離れお客さんの相手を始めた。
「ううん。忙しいんだろうなとは思ってたから。」
「………そっか。何飲む?いつもの?」
表情を明るく変えて聞いてきた薫の言葉に私が浮かんだのはひとつだった。
「…あ、あれがいい。薫が最初に作ってくれた強いやつ。」
「…アースクエーク?……わかったよ。」
一瞬驚いてからちょっと呆れた顔をした薫は手際よくその一杯を作って出してくれた。
「お待たせ。どうぞ。」
優しく差し出されたグラス。
ひと口、口をつけるとやっぱり辛口だけど美味しかった。
「うん。辛口だね。でも結構好きだよ。」
「そ?さすがだね。」
微笑み合っていると客席から戻った雄太くんはギョッとして私とグラスを見比べ、心底驚いていた。
「………アイちゃん最強だね。顔色ひとつ変わらないじゃん。それなのにいつもジントニック一杯?」
「さすがだろ?俺も今まで酔ったの見たことない。」
「薫ー。なんでそんな楽しそうなのよ。」
クスクスと笑いあい、 ひと時を過ごす。
ここは、私の大切な居場所だ。
………今日までの。