いと。

「じゃあね。」

送ると言った俺の申し出を、愛は『片付けが残っているでしょう』と断った。

たしかにこの界隈はタクシーも多いし、さほど遠い距離でもない。

だけど………

「薫?どうし…………っ!」

その華奢な身体を力を込めて抱きしめる。

一緒に向き合うと言い切れない俺はなんて不甲斐ないんだろう。

「ごめん。

何もしてやれなくて、支えてやれなくて、情けないよ。

愛、…………愛してる。」


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