いと。

「ありがとうございました~」

結局買ったのはゼリー飲料ひとつだけだった。

それを店の外でちびちびと飲み、ゴミを捨ててトボトボと帰る。

あんなにしゃっきりと薫の前や父の前では振舞えたのに、一人になると空気が抜けた風船みたいにダメみたいだ。

足元がふわふわしている気がするけれど、そんなこと……もうどうでもいい。


『俺の大事な愛を、君も大事にして』


………ううん。もう、いいでしょ。

もう薫のものじゃない私を、大事にする意味なんかどこにもない。

私すら要らない私を、労わる意味もどこにもない。

「…ダメだな、私。強くならなきゃいけないのに…。」


これからは…ひとりで生きていくんだ。


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