いと。
6章 愛と曜
翌朝、起きてリビングに行くと思いもよらない光景があった。
「……………朝からお料理、するんですか?」
休日なのか、ラフな格好にエプロンをつけた戸澤さんはキッチンで冷蔵庫を開けようとしていた。
「あ?…当たり前だろ。誰がメシを作るんだよ。」
その口調はやっぱり刺々しい。
「…昨日いらしてた花井さんがするのかと思ってました。」
「こんな朝早くから仕事させたら気の毒だろ。節子さんに頼んでるのは掃除とクリーニングだけだ。」
「そ…うですか。あ、お手伝いします。」
手を洗い始めると戸澤さんは卵を幾つか持ってため息をついた。
「いや、いいから休め。キッチンでいきなり倒れられたらジャマ。
お前の仕事はさっさと身体を治すことだ。」
「………ジャマはしません。動ける時は少しずつでも動いた方が回復は早いですし、お世話になりっぱなしは借りを作ってるってことなので嫌です。
料理は好きですよ。何を作るんですか?」
少しずつでもいいから動きたかった。何かしたかった。
じゃないと……薫のことばかり考えてしまって、胸が潰れそうだった。
「………じゃあ、任せてもいいか。」