いと。

お茶碗ほどの器にスープをよそって渋々テーブルの向かいに座ると、

「いただきます。」

静かな響きと、指先までキレイに揃えた両手が見えた。

「…いただきます。」

…この人とこんな風に向かい合って食事をするなんて。

そんなことありえないと思ってた。

………やだな。

ただでさえ人と食事をするのが苦手なのにその相手がこの人なんて。

薫以外の人との食事は結局、大きな違和感と居心地の悪さでちっとも美味しいと思えなかった。


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