いと。
「京都………行ってくる。明日。」
「え?…京都?」
食事を済ませてソファで翌日のことをぼうっと考えていた私は、曜に行き先を告げた。
「うん。母の誕生日なの。この日だけは毎年必ず会いに行ってる。」
「………母親って。」
「そう。私を娘だとわかってない私を愛してない母親。
…でもね、行くと笑顔で迎えてくれる。それに、記憶力があまり………だから少しは行かないと、本当に私のこと…記憶から消されちゃう。
愛されないってわかってるのに縋ってるみたいで自分でも滑稽だなって思うけど、それでも行かなきゃいけないなって。」
「…………そっか。オレ、一緒に行ってやれるといいんだけど…」
曜の顔は、心配そうに歪んで私を見つめた。
「え?…ああ、いつもひとりだし、平気だよ。ありがと。」