いと。
『待ってるから』
母に会いに行くときいつも感じる緊張感と焦燥感で固まりかけていた心は、その一言でじわりと溶けていった。
待っていてくれる人がいると思えば、母の反応に心が痛むことがあるとしても頑張れる気がした。
………さっき、キスしたよね。
強引に…だったけどあれはきっと彼なりの応援だった………と思う。
何も言わず優しく寄り添って送り出してくれた薫とは違う、彼なりの。
それに、向けられた笑顔は明らかに私のためのもので…
『想われている』
そう感じるには十分すぎた。
その想いに応えられるのかどうかもわからないというのに。
…………無性に切なくなった。