いと。
「京香……どうし………!」
その姿を見て一目でわかった。
記憶が戻っていると。
応接間のソファに座った彼女。
京都の由緒ある家の娘らしく背筋を伸ばした綺麗な姿勢の座り方。
立ち上がって一礼をする指先まで整った美しい所作。
年の割に童顔ながらも凛とした笑顔。
ついこの前までの、ほんわかとした緩さは影もない。
「………………思い、出したのか。」
瞬きすら忘れ、その事実を確認する。
「………はい。全て。」
その口調はやはりゆるり…ではなく凛と涼やかだ。
「そう……か。……そうか。」
自然と、手が彼女に伸びる。
ずっとずっと会いたかった愛しい女。
その時だった。
一瞬できりりと変わったその瞳。
「…大事なお話があって参りました。」
「話…?」
上げられた手は触れることも叶わず降ろされる。
「はい。…愛の結婚は破棄していただきます。」