いと。
ましろの本社に電話すると、秘書らしき人物に『社長は急用で自宅へ戻った』と聞かされた。
間違いない。愛の母親は来ている。
車を走らせそこに着くと門の前には一台の黒塗りの車がいた。
「帰ってる…。いや、出るのか?」
急いで車を降りると、家から出てきたのはふたりだった。
あれは…
「眞城社長!」
慌てて声をかけると、こちらに気づいて一瞬目を細めた彼はこちらに向いた。
その後ろには愛に似た凛とした女性が寄り添って立っている。
「…曜です。突然お伺いしてすみません。急用で…」
一礼をしてそう口を開くと
「…愛のことだな。」
明らかに怒りを含んだ憮然とした態度で唸るようにそう言った。
…何か知っているのか?
「お前もグルなのか?知っていてこの話を受け入れたのか?」
低く重く響く威厳のある声で詰め寄られたけれど訳がわからなかった。
「…何のことですか?オレは愛を探してここに…」
「総一郎さん、おそらく彼も被害者です。
………知っていたらこんなこと、受け入れるはずがありません。」
ピンと張ったような声を出したのは…愛の母親だった。
「………息子まで謀ったか。」
チッと舌打ちをひとつ零し、眞城社長は車に乗りこんだ。
「…今朝は電話で失礼しましたわね。
あなたも来なさい。あなたの人生に関わることですから。」
彼女はそう告げると、社長に続いて車に乗りこんだ。
「………………。」
……グル?……謀った?
何一つわからず、オレはそのままその黒塗りの車の後を追い、向かった。
……………父のいる本社社長室へ。