いと。
「…曜さん。事実を知った以上あなたが愛と結婚することは許されません。
たとえ戸籍上の問題がなくとも。
所詮は勝手に決められた愛情のない結婚。
今回のことは綺麗さっぱり忘れて、あの子のことは放っておいて。
今はきっとひどい仕打ちを受けたことがショックだろうけど、いつかは立ち直って……」
「違う!」
凛とした佇まいで並べられた言葉を全身で否定する。
『勝手に決められた愛のない結婚』
そんなんじゃ…ない!
「………曜?」
拳を握り怒りを堪えるオレを、3人は一様に不思議そうに見つめた。
「違う。確かに始まりは勝手な理由ではあった。
でも………オレたちはちゃんと、気持ちを持ってた。
やっと…やっと本当に心が通ったところだったんだ。」
行き場のない想いが拳に伝わって震える。
「…曜さん、あなた本気で…?」
3人ともがまさかという顔をしていた。
「彼女の強さや優しさを見てきて…気づいたら惹かれていました。
でも、目的のために近づいたオレを彼女が信用するはずもなくて。
やっと…やっと伝わったところだったんです。
一生そばにいると、一緒に幸せになると約束したところだったんです。
なのにこんな………。」
「…曜。惚れるなと言ったろ?」
呆れたような声を響かせたのは父だ。一気に怒りが膨れ上がり、掴みかかりたい衝動を堪える。
「…惚れるな?言ってることがおかしいだろ?
さっさとモノにしろ結婚しろと言っておきながら惚れるな?
オレをなんだと思ってるんだ!」
こんなやつのいうことを聞いてきたなんて。
こんなやつが……父親なんて。
「…ふっ。残念だったな。これで提携の話はチャラだ。
あんたが株主連中にあることないことでっち上げてかき集めようとしてる株もこれで意味がなくなる。
……失敗だよ!あんたがましろを喰い潰そうとするくだらない目論見は!」