いと。

何か手がかりはあるかとタクシーをつかまえて聞いてみた。

「この辺はホテルや旅館もあるけど、若い女の子が働いてるとこってあります?

家出した妹を探してて…。病気の母に会わせたいんです。」

………ウソ八百。母は父に愛想をつかせて海外で暮らしてるだけで、病気なんかではない。

「…おぉ、大変だなぁ兄さん。

女の子ねぇ……。あぁ、そういえば何ヶ月か前に桐子さんとこにひとり入ったなぁ。」

「桐子さん?」

その運転手によると、20代前半くらいの細身のキレイな女の子がある日からその『桐子さん』の経営する旅館で仲居として働き始めたそうだ。

それが今回オレが泊まる旅館だった。

明らかに訳ありっぽい彼女を桐子さんは、特にここ一ヶ月ほど大事そうにしていて、その子は何度かバスやタクシーで街の病院にも行ったりしてる。

そうも言っていた。


………それっぽい。


いつになく有力な情報に、オレの心は久しぶりに明るくなるようだった。


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