いと。
言いたいこと…?
そんなの、山ほどどころじゃない。私の人生はこれまでずっと飼い殺しだった。
「じゃあ、言わせてもらいます。
………私、あなたが大嫌いだった。
物心ついた頃には冷たい視線を向けられて、理由もわからずそれを受け入れるしかなくて。
どんなに頑張っていい子にしても、どんなに頑張って笑いかけても…、帰ってくるのは汚いものを見るような目つきだけだった。
絶対関わってこないくせに決して自由にはしないで縛りつけて…。
あなたのおかげで私は、自分の名前は呪われてると本気で思ったし生きてることを何度も後悔した。」
全てを吐き出してしまおうと決めた私はもう止まらなかった。
暴走してしまわないように曜の袖をぎゅっと掴んで、苦しかった思いを昇華させるように言葉に変えた。
「それだけじゃない。毎日毎日監視を付けられて友達には変な目で見られるし、やっと見つけた大切な場所だって…失くした!
大事な……人たちも……失くした……!
夢も希望も…全部……!」
浮かんだのはLINKの店長の悲しそうな顔や………
薫……。
私の言葉を、父はただ黙って口を結びまっすぐに受け止めて聞いていた。
「私……いった…。」
緊張感からくるものなのか、お腹が少し張るような違和感を覚えて咄嗟に手で撫でる。
「愛、座って。落ち着いてゆっくり話せばいい。」
促されるまま曜と一緒にソファに腰掛けひと息つくのを、両親は揃ってポカンと見ていた。
「…愛?お腹…調子、良くないの?」
気遣ってくれるお母さんは不思議そうな顔をしている。
「え?あぁ。ちょっと張っただけ。ふたりだからね。でも大丈夫だよ。」
「…は、張る?…ふたり?」
父も同じ……違う。もっと動揺した表情を浮かべている。
「……あれ?曜?言ったんじゃないの?」
「オレは何も。そういう大事なことは娘の口から直接話すもんだろ。
…どうしてここに来ようと思ったのか、それを伝えればいい。」
「……………。」
そうだ。私がここに来たのは…。
「もう、いいです。少しスッキリした。それに今は、曜に救われて私は幸せでいられてるから……。
その代わり、ふたりにお願いが。」
ここに来たのは、願いがあるからだ。
私の言葉を待つ両親は寄り添っていて、その姿は20年以上離れて暮らしていたとは思えないほど自然だった。
「…お母さん、………お父、さん。私、お腹に曜の赤ちゃんがいる。ふたり。
この子たちを……おじいちゃんおばあちゃんとして愛してほしい。
私に向けられなかった愛情を全部、この子たちに向けてほしい。
だから今日、ここに。」