いと。
「………おじいちゃん………?」
キョトンとしてばかりの父に対してお母さんは涙をためて私の妊娠を喜んでくれた。
「愛…。そう、赤ちゃんが…。
おめでとう。曜さん、愛をよろしくね。」
「はい。一生、大切に…幸せにします。
それで……。」
「……………曜?」
持っていたバッグから何かを出した曜は、それをひらりと応接用のガラスのローテーブルに置いた。
「……これ!?曜ってばいつの間にこんなの用意してたの!?」
目の前にあるのは……婚姻届だ。
「いつの間にって…愛が京都に行った日?戻ったらすぐにって思ってたし。」
当然と言わんばかりに飄々とした曜はその紙を父と母に向け、姿勢を正しこう言った。
「…眞城社長、奥様。彼女のこれからの人生の全てにおいて、私が寄り添い共に幸せを築くと誓います。
それを…見届けていく証人として、お名前をいただけないでしょうか。」
曜の視線も言葉も驚くほどにまっすぐで、かっこいいなと…思ってしまった。
そんな曜の言葉を受け止めた父は、私が見たことない穏やかな表情で、こう言った。
「あぁ、わかった。君に私の愛しい娘の全てを託そう。
………愛。
心から、祝福するよ。……おめでとう。」