いと。
薫さんのスープはとっても美味しかった。野菜たっぷりのトマトスープ。
少ししか食べられないけど、薫さんみたいな優しい味で…とっても幸せな気持ちになった。
「美味しかったです。薫さんホントにお料理上手ですね。」
キッチンに並んで食器を片付けながらそう言うと薫さんはちょっと得意げな顔をしながらこう返した。
「そ?今度は愛が作ってよ。」
「……………」
「愛?」
お皿を持つ手がひたりと止まる。
「……………」
薫さんが呼ぶ私の名前は、本当に愛しさが詰まっているように甘く…しっとりと響く。
あんなに嫌いだったこの名前を、少し許してあげられる気がした。
この人になら…呼ばれてもいいと思った。
そう…たったひとりの『愛しい人』として。
「薫さん…。」
「ん?」
この気持ちを全部、伝えなきゃ。
「薫さん…。私……薫さんになら、本当の名前で呼ばれてもいいです。
薫さんだけです。特別です。
………私も、薫さんの特別でいたい。
………………好きです。」
夢中だった。お皿を持つ手は少し震えていたような気がした。
上手く伝えられたかもわからない。
とにかく夢中だった。
そんな私に薫さんは甘く優しくキスを落とし、
「絶対に、幸せにする。」
そう言ってくれた。