いと。
「…なんの冗談?」
……一体何を考えて………
目的が全然わからない。
「私がお前に冗談なんか言ったことが?
結婚してもらう。私の決めた相手と。」
さも当然のように言い振る舞うその姿には吐き気さえする。
「…は?ふざけないで。もし本当にそう言ってるのだとしても断る。
ここまでひとつも愛情を貰わずに来たのに、今更義理を立てるつもりはない。
あなたに結婚相手を決めさせるなんてもってのほか。」
こんな人に人生を決められるなんて絶対にごめんだ。
「義理ならあるだろう。
確かに愛情を注いだつもりはないが……
なんの不自由もなく短大まで行かせたのは誰だ?」
勝ち誇ったような顔に顎を撫でる仕草。
これは私が、この世で最も嫌いな仕草だ。
「…生活費も学費も、毎日嫌になる程バイトして半分以上は自分で出した。だからこそ4年制の大学じゃなくて短大にした。
毎月振込されて残ったお金とマンションを売ったお金はあなたに返した。十分でしょ!?」
もう嫌だ。……限界だ。
くるりと背を向け、店に入る。
その私に父は一言………
「また来る。辞表を書いておけ。」
そう言い残して去って行った。