いと。
ひとりジントニックのグラスに口を付け、ふと今日の仕事を思い返す。
「…はぁ。」
ついつい出た溜息は疲れからではない。店長の仕事ぶりを再認識したからだ。
接客、商品の目利き、店内の隅々までキレイに空間を彩る完璧な商品のディスプレイの仕方。
勉強するべきことが、まだまだたくさんある。
専門知識だって足りない。もっともっと、店長からいろんなことを吸収していかないと。
考え始めると、やりたいことは山のようにあった。
「…どうしたの?そんな顔して。」
「わっ!?…薫。そんな顔って………。
ちょっと仕事のこと考えてただけだよ。」
気づくとお客様の相手もそこそこに戻り、カウンター越しに私を見つめる薫がいた。
薫はいつも私を優先してくれる。
…私だって客商売の接客の大切さはわかっているし、だからこそ『放っておいて、何なら来るのを遠慮する』といつも言っているのに。
それでも彼は
『愛は特別だからいいの』
そう人前で言って憚らない。
…ここは薫めあての客も多いというのに。