いと。

「どうしたの?そんな顔して。」

観察眼の鋭い薫は私の変化にすぐに気づく。

心配そうな声と眼差し。


無性に、切なくなった。


「薫…。今日、薫のところで待っててもいい?」

いつもはこんなこと言わない。誘うのは薫からだ。

でもどうしても今日は、そばにいて欲しかった。そうじゃないと、自分が保てない気がして怖かった。


薫は少し驚いた顔をして………


だけどいつものふんわりとした笑顔と得意気な表情で、

「いいよ。早く帰るからいい子にしてて。

………ベッド、温めててね。」

そう言ってキーを渡してくれた。


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