いと。

「………と。い……。……いと、愛!」

「…っ!」

強く引き寄せられる感覚と名前を呼ばれる声に意識が戻る。

気がつくと………

大好きな、薫の腕の中だった。

「愛、大丈夫?」

部屋の明かりを受けて逆光になっている薫の表情は、きっとひどく心配してるはずだ。

だってその声はとても切なく、同時に青ざめたように焦って響いたから。

「………私、なんか、言ってた?」

「………うなされてたよ。『もうイヤ』って。大丈夫?何があった?」

目元と頬を拭ってくれるゴツゴツした男性らしい手の温もり。それで初めて、私は自分が泣いていたことに気づいた。

「……………泣いてたんだ。私。」

ポツリと呟いたその一言は、思った以上に切なく苦しく胸を締め付けてしまい…


どうしても、


どうしても、


薫が欲しくなってしまった。


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