いと。
膝の上に横抱きにされたまま、そろりと薫へと手を伸ばす。
頬に静かに触れて、いつも薫がしてくれるように唇に親指を滑らせる。
薫からはまだお店の匂いがしていた。
タバコと、何かのリキュールの匂い。
それは帰宅して私に慌てて寄り添ってくれた証拠だ。
愛しい人が私を想い、寄り添ってくれる。
こんなに幸せなのに………
あんなやつの一言でこんなに不安にさせられるなんて。
自分の弱さが嫌になる。
そんなことを考えながらも 私の空いていたもう片方の手は、薫の首元のシャツを掴み……
「………愛?……っ!」
強く引き寄せ、一気に……その少し薄い唇を奪うように口づけていた。