いと。
いつだったか、一度店の前で思いっきり蹴飛ばされたことがあった。
「薫さんにこれ以上近づかないで!」
そう涙声で叫ぶ女はいつも薫が特別扱いする私をとっても嫌いだったそうで。
「い…った…!」
10㎝はあるだろうピンヒールで腰を蹴られ、薄手のブラウスが破けて傷を作ったのだ。
突然のことに動けずにいた私を助けたのは彼女のただならぬ声を聞いて店を飛び出してきた薫だった。
雄太くん曰く、『すっごいヒーローみたいだった』という薫。
「お前はもう俺の前に姿を現すな。」
固まって泣きそうな顔の彼女にそう冷たく言い放ち、店を雄太君に任せて歩いて10分の彼のマンションまで私を抱えて帰った。
そして、
『ごめんな』
そう何度も言いながら、手当をしてくれた。
しかもその日を境に彼は、私を脱がせると必ずそこにキスマークをつけるようになった。