常務サマ。この恋、業務違反です
高遠さんは言葉を切ったまま飲み込んで、片手で隠した顔を私から背けた。
そして私の視界には、さっきよりも赤くなった高遠さんの耳が映りこんで来る。
言葉で説明されるよりも、ずっとずっと雄弁だった。
結構ムッとすることを言われたはずなのになんだか微笑ましい気分になって、つい口元を手で覆ってクスッと笑ってしまった。
「……高遠さんって……見掛けによらず、シャイなんですね」
「バカにしてるのか」
「いえ。ちょっと意外でしたけど」
言葉を重ねてクスクス笑う私に、高遠さんは不貞腐れたように黙っている。
「あの……。実は私もずっとドキドキして緊張してたんです。
……だから、お互いに事故だと思って忘れましょう? じゃないと、すごくやり辛いですから」
「……わかった」
口をへの字に結んで、まだ不機嫌な表情のまま、高遠さんは黙って椅子に座った。
それを見て、私も気持ちを引き締めて、高遠さんの決裁箱を抱えてデスクに戻る。
さっきまでのような緊張に満ちた空気はない。
それとは違うどこかくすぐったい空気が漂って……。
私も高遠さんも何も言葉を交わさないまま、再び仕事に没頭した。
そして私の視界には、さっきよりも赤くなった高遠さんの耳が映りこんで来る。
言葉で説明されるよりも、ずっとずっと雄弁だった。
結構ムッとすることを言われたはずなのになんだか微笑ましい気分になって、つい口元を手で覆ってクスッと笑ってしまった。
「……高遠さんって……見掛けによらず、シャイなんですね」
「バカにしてるのか」
「いえ。ちょっと意外でしたけど」
言葉を重ねてクスクス笑う私に、高遠さんは不貞腐れたように黙っている。
「あの……。実は私もずっとドキドキして緊張してたんです。
……だから、お互いに事故だと思って忘れましょう? じゃないと、すごくやり辛いですから」
「……わかった」
口をへの字に結んで、まだ不機嫌な表情のまま、高遠さんは黙って椅子に座った。
それを見て、私も気持ちを引き締めて、高遠さんの決裁箱を抱えてデスクに戻る。
さっきまでのような緊張に満ちた空気はない。
それとは違うどこかくすぐったい空気が漂って……。
私も高遠さんも何も言葉を交わさないまま、再び仕事に没頭した。