常務サマ。この恋、業務違反です
M-5 制御せよ!
加瀬君を見送ってから、私は少しの間エレベーターホールから動けなかった。
私、加瀬君になんて言ったっけ。高遠さんのこと、どんな風に話したっけ。
加瀬君が呆れてあんなことを言うほど、私情が挟まってしまったんだろうか。
俯いて爪先を見つめながら、そんなことないって言い切れない自分に気付く。
仕事で全く役に立てないのなら、せめて高遠さんが気持ち良く仕事出来るように。
そんな意識の元、私がやって来たことは、普通に考えたら秘書の仕事とはかけ離れている。
それでも喜んでくれるから。少しずつでも、心を開いてくれるから。
出来る範囲で頑張るって、人事部長にも宣言した。
そしてそれは加瀬君からしたら、何やってるんだって呆れるほど、私が迷走してるように見えるんだろう。
だから加瀬君らしくないあんな冷たい口調で私を諌める。
『立派な秘書になる為じゃない。高遠さんに気に入られる為でもない』
怖いくらい直球で心を打ち抜いた加瀬君の言葉に、私はうろたえた。
言われるまでもなく、私が今ウェイカーズにいる理由はそんなもんじゃない。
たった三ヵ月期間限定で私は本来の業務に戻る。
そう約束されているから、私はこの理不尽な業務命令に従った。
最初から更新する必要のない『派遣契約』
それは私が本物の派遣社員じゃないからだ。
「……何、してるのよ、私は……」
自分を責めるようにそう呟くと、何の意図もなく加瀬君に話した言葉が頭の中に蘇って来た。
私、加瀬君になんて言ったっけ。高遠さんのこと、どんな風に話したっけ。
加瀬君が呆れてあんなことを言うほど、私情が挟まってしまったんだろうか。
俯いて爪先を見つめながら、そんなことないって言い切れない自分に気付く。
仕事で全く役に立てないのなら、せめて高遠さんが気持ち良く仕事出来るように。
そんな意識の元、私がやって来たことは、普通に考えたら秘書の仕事とはかけ離れている。
それでも喜んでくれるから。少しずつでも、心を開いてくれるから。
出来る範囲で頑張るって、人事部長にも宣言した。
そしてそれは加瀬君からしたら、何やってるんだって呆れるほど、私が迷走してるように見えるんだろう。
だから加瀬君らしくないあんな冷たい口調で私を諌める。
『立派な秘書になる為じゃない。高遠さんに気に入られる為でもない』
怖いくらい直球で心を打ち抜いた加瀬君の言葉に、私はうろたえた。
言われるまでもなく、私が今ウェイカーズにいる理由はそんなもんじゃない。
たった三ヵ月期間限定で私は本来の業務に戻る。
そう約束されているから、私はこの理不尽な業務命令に従った。
最初から更新する必要のない『派遣契約』
それは私が本物の派遣社員じゃないからだ。
「……何、してるのよ、私は……」
自分を責めるようにそう呟くと、何の意図もなく加瀬君に話した言葉が頭の中に蘇って来た。