常務サマ。この恋、業務違反です
それでもそこはさすがエグゼクティブ。
不機嫌なりに……かなり素っ気なく適当な感はあったけど、高遠さんも初対面の二人と会話をし出した。


妙に舞い上がっていた二人も、一杯目のビールが無くなる頃には緊張も和らいだのか、いつものハイテンションさを取り戻して、いい感じにこの微妙な飲み会を盛り上げてくれる。


二人のノリに半分引き気味だった高遠さんも、いくらか苦笑混じりでも途中からだいぶ態度を軟化させてくれた。


正直なところ、ちょっとどうなるか心配だったけど、やっぱり二人を誘って正解だった、と思った。
はしゃぐ二人の女性社員を眺めながら、私はカクテルグラスを手にしたまま気付かれないように高遠さんを盗み見た。


高遠さんとのプライベートに舞い上がっているのは、二人だけじゃない。
私だって、もし二人きりだったら、きっと怖いくらい緊張していたと思う。


今朝のことだって、本当はずっとドキドキしていた。
いつも通り仕事をこなすのだって必死で……。
それなのに、『お互い忘れましょう?』なんて余裕ぶっこいたセリフを言えたのは、私以上に高遠さんが照れていたからだ。


その証拠に、あんなこと言っておいて、私はあの後もずっと高遠さんの気配に敏感だった。
私の言葉で落ち着きを取り戻して、平然としていた高遠さんが小憎らしいと思えるほどに。


だから、高遠さんからの突然のお誘いに動揺した。
断るって意識は全く働かず、二人きりって状況をいろいろ深読みしてドキドキして、胸が苦しくなって。


国際部の二人に声を掛けたのは、私なりの苦肉の策だった。
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