常務サマ。この恋、業務違反です
まるで、餓えた獣に骨まで食い尽されるような錯覚に陥った。
これまでに私が知ったつもりでいた高遠さんからはとても考えられない乱暴な行動に、思考は完全に麻痺して、身体は抵抗を忘れて動かなくなる。
どれくらいの間、そうやってキスを交わしていたのか。
高遠さんの唇が吐息を漏らしながら離れて行った時、私はただ呆然と高遠さんを眺めるしか出来なかった。
ほんの少し見上げた位置に見える高遠さんの唇は濡れていて、いいようもないくらい艶っぽい。
おかげでそこばかりに目が行ってしまう。
私の無意識の目線に気付いたのか、高遠さんは頬を赤らめて乱暴にグイッと唇を手の甲で拭った。
そして、デスクから手を離すと、勢いよく私に背を向けて、そのまま大股で執務室を横切って行った。
「あ……」
その背中を目だけを動かして追いかけた。
呼び止めなきゃ、って思ったのに、まともに声が出なかった。
「ごめん」
私を振り返ることもないまま、高遠さんはドアに手をかけて小さな声で呟いた。
「あんたの言う通り、冷静になるべきか。……俺の方が出て行くよ」
素っ気なくそう言って、高遠さんは音を立ててドアを閉めて出て行ってしまった。
物音だけで高遠さんがいなくなってのを感じて、私の身体に失われていた時間が戻って来る。
ハッと引き攣ったような息を吐いた後、中途半端に腰掛けていたデスクから身体を起こして体勢を整えようとした。
なのに足に力が入らなくて、私はその場にペタンと座り込んでしまう。
これまでに私が知ったつもりでいた高遠さんからはとても考えられない乱暴な行動に、思考は完全に麻痺して、身体は抵抗を忘れて動かなくなる。
どれくらいの間、そうやってキスを交わしていたのか。
高遠さんの唇が吐息を漏らしながら離れて行った時、私はただ呆然と高遠さんを眺めるしか出来なかった。
ほんの少し見上げた位置に見える高遠さんの唇は濡れていて、いいようもないくらい艶っぽい。
おかげでそこばかりに目が行ってしまう。
私の無意識の目線に気付いたのか、高遠さんは頬を赤らめて乱暴にグイッと唇を手の甲で拭った。
そして、デスクから手を離すと、勢いよく私に背を向けて、そのまま大股で執務室を横切って行った。
「あ……」
その背中を目だけを動かして追いかけた。
呼び止めなきゃ、って思ったのに、まともに声が出なかった。
「ごめん」
私を振り返ることもないまま、高遠さんはドアに手をかけて小さな声で呟いた。
「あんたの言う通り、冷静になるべきか。……俺の方が出て行くよ」
素っ気なくそう言って、高遠さんは音を立ててドアを閉めて出て行ってしまった。
物音だけで高遠さんがいなくなってのを感じて、私の身体に失われていた時間が戻って来る。
ハッと引き攣ったような息を吐いた後、中途半端に腰掛けていたデスクから身体を起こして体勢を整えようとした。
なのに足に力が入らなくて、私はその場にペタンと座り込んでしまう。