常務サマ。この恋、業務違反です
オフィスを出て一度は駅に向かった。
それでも真っ直ぐ帰る気になれなくて、目に止まったカフェに立ち寄った。
コーヒーを飲みながらぼんやりと過ごして、その間もずっと高遠さんのことばかりを考えていた。
気付くと、時計の針はもう九時を示していた。
この時間ならきっと高遠さんも執務室に戻ってるだろうか。
ビルを眺めたまま、私はギュッと手を握り締めた。
このまま帰って明日いつも通り出社しても、高遠さんは今日のように私を避けようとするだろう。
もしかしたら明日だけじゃなく、しばらくずっと私と顔を合わせようとしないかもしれない。
そうやって時間が記憶を風化させてくれるのを待とうとしている。そんな気がした。
高遠さんがそのつもりなら、そうすることが正解なのかもしれない。
私だっていい大人だもの。
衝動任せの行動を本気と捉えようなんて思わないし、何もなかったように振舞うのは難しいことじゃない。
本当に高遠さんが私を避け続けるつもりでいるのなら、私だって割り切るべきだ、と思う。
それに納得出来ないのは、確かに私の耳に届いたあの一言のせいだ。
今、どんな顔してる? 何を考えている?
私にしたことを記憶から抹消しようとしてるのかな。
そうやって……。
あの一言も、うやむやにするつもりなのかな?
脳裏に過った自分の考えに、私はキュッと唇を噛んだ。
そうして、ビルを眺めたまま身体の向きをクルッと変える。
大きく一歩踏み出した後、水溜りの雨水がスカートに撥ね上がるのも気にせずに、勢い良く駆け出した。
それでも真っ直ぐ帰る気になれなくて、目に止まったカフェに立ち寄った。
コーヒーを飲みながらぼんやりと過ごして、その間もずっと高遠さんのことばかりを考えていた。
気付くと、時計の針はもう九時を示していた。
この時間ならきっと高遠さんも執務室に戻ってるだろうか。
ビルを眺めたまま、私はギュッと手を握り締めた。
このまま帰って明日いつも通り出社しても、高遠さんは今日のように私を避けようとするだろう。
もしかしたら明日だけじゃなく、しばらくずっと私と顔を合わせようとしないかもしれない。
そうやって時間が記憶を風化させてくれるのを待とうとしている。そんな気がした。
高遠さんがそのつもりなら、そうすることが正解なのかもしれない。
私だっていい大人だもの。
衝動任せの行動を本気と捉えようなんて思わないし、何もなかったように振舞うのは難しいことじゃない。
本当に高遠さんが私を避け続けるつもりでいるのなら、私だって割り切るべきだ、と思う。
それに納得出来ないのは、確かに私の耳に届いたあの一言のせいだ。
今、どんな顔してる? 何を考えている?
私にしたことを記憶から抹消しようとしてるのかな。
そうやって……。
あの一言も、うやむやにするつもりなのかな?
脳裏に過った自分の考えに、私はキュッと唇を噛んだ。
そうして、ビルを眺めたまま身体の向きをクルッと変える。
大きく一歩踏み出した後、水溜りの雨水がスカートに撥ね上がるのも気にせずに、勢い良く駆け出した。