常務サマ。この恋、業務違反です
カーテンの隙間から射し込んで来る日射しが眩しい。
閉じた瞼の裏に煌々と明るさを増していくみたいで、私はキュッと眉をしかめた。


今日は土曜日だもの。もうちょっとゆっくり眠っていたい。
睡ろみながら自分を甘やかして、私は百八十度寝返りを打って窓に背を向けた。


同時に、掛け布団が少し浮き上がる。
朝の空気はまだ肌寒い時期。布団にくるまって小さく身体を丸めようとした時、身体に纏わり付く温もりに気付いて、私はうっすらと目を開けた。


「やっと起きたか」


頭上から声が降って来て、一瞬身体を硬直させた。
思考を働かせる間もなく、目覚めのきっかけになった温もりが温かい腕だと気付いた。


「……もしかして、覚えてない、とか……?」


訝しそうな声が聞こえて、私はハッとして顔を上げた。
私の目の前に逞しい胸元を惜しげもなく晒した姿で、高遠さんがベッドに肘を突いて、こめかみを支えながら私を見下ろしていた。


「お、覚えてますっ……」


完全停止していた思考がようやく働き始める。
今この状況が一気に流れ込んで来て、私はあまりの気恥かしさにカアッと頬を熱くした。


「それなら良かった。さすがに相手に全く覚えてないなんて言われたら、虚しい気持ちになるよな。
……あんなにご奉仕してやったのに、って」

「っ……!」


耳元に顔を寄せて、最後の一言だけ意味深に声を低められて、ドクンと鼓動が高鳴った。
真っ赤な顔を布団に隠すように身体を丸める私を見遣って、高遠さんはクスクス笑いながら身体を起こした。
< 150 / 204 >

この作品をシェア

pagetop