常務サマ。この恋、業務違反です
そおっと布団から顔半分だけ出すと、高遠さんは上半身裸のままで窓辺に向かって歩いて行く。
そしてカーテンをシャッと開けて、その身体いっぱいに太陽の光を浴びた。


朝の光に縁どられて、金色に光って見える身体の輪郭。
この世の生き物とは思えないくらい綺麗で、私はただポーッとその背中に見惚れてしまう。


つられるように身体を起こすと、気配に気付いたのか、高遠さんはゆっくりと振り返った。
そして、ちょっとはにかんだ柔らかい笑顔を私に向けた。


「おはよう」

「お、はよう、ございます……」


布団を口元まで引っ張り上げて、伏せ目がちにモゴモゴと返事をした。


しっかり覚醒してしまうと、改めて顔から火が出るくらい恥ずかしい。
高遠さんの綺麗な背中には、昨夜私が付けた爪の痕が残っている。


高遠さんは、小さく笑ってからベッドに戻って来る。
端っこに腰掛けて、上半身を捻るようにして私を抱き寄せた。
そのまま額に軽く唇を落とす。


「まだ眠い? 俺は短時間睡眠に慣れてるからいいけど、あんたはまだぼんやりしてるな」

「それは……」


『高遠さんに、見惚れてたから』


恥ずかしいことをポロッと口走りそうになって、私は慌てて口を噤んだ。


高遠さんは蕩けてしまいそうなくらい優しい瞳を向けながら、私の髪を指先に巻き付けて遊んでいる。
そのまま黙る私をジーッと観察した後、小さく肩を竦めてベッドの端に深く座り直した。


「……いっそ……今日は一日中このままでいようか」

「えっ?」

「普段あれだけ働いてるんだから、休日くらい自堕落になっても許されるだろ」


そんならしくないことを言いながら、高遠さんは再びベッドに身体を滑り込ませた。
そして、ぎゅうっと私を抱き締めながら、体重を預けて来る。
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