常務サマ。この恋、業務違反です
心の中だけで葛藤する私を見抜いたのか、ああ、と短く呟いて高遠さんはベッドを軋ませて身体を起こした。
そして私を後ろから抱き寄せると、そのまま腕の力を強めた。


「ひゃっ……!」


背中に高遠さんの胸の温もりを感じて、一瞬身体を震わせた。
私の反応を確認しながら、高遠さんは意地悪に腕の力を強める。


「逃げるな。これが動かぬ証拠だから、ちゃんと感じろ」

「え?」

「……好きな女には、強気でぶつかりたい。それでも冷静にはなり切れないし、胸の鼓動だけは誤魔化せない」


その言葉を頭の中で理解した途端、背中に伝わってくる高遠さんの鼓動の速さに気付いた。
あ、と声を上げると、高遠さんは私から顔を隠すように首筋に顔を埋めた。


「……希望」


掠れた小さな声に、ドキンと胸が高鳴った。


昨夜この腕に翻弄され続けながら、何度も耳元で名前を呼ばれた。
仕事中は呼ばれることのなかった名前。
高遠さんの唇で声で呼ばれただけで嬉しくて、怖いくらい感じた幸せを、今また心に刻み込まれる。
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