常務サマ。この恋、業務違反です
「……今日は、ずっとこうしてたいな」


その上そんな甘い声で甘えられたら、私はもう拒む言葉を見つけられない。
そもそも、拒む気持ちすら全くなかった。


「……もう」


子供の悪戯に負けた母親のような気分。
愛おしさばかりが勝って、その行動を窘めようって気持ちは全く湧き上がって来ない。


「……航平」


昨夜。
与えられる熱に犯されながら、狂ったようにその名を呼んだ自分を思い出す。
そんな想いが伝わったのか、高遠さん……航平は、一瞬ピクッと指を動かした。


「……精神衛生上良くないのに、甘やかすんだ?」

「仕事中はいつも甘えてるから……休日くらい、甘やかしてあげます」


肩を強張らせながら強がる私に、航平は肩を揺すって笑った。


「一応聞くけど、それって俺だけの我儘なのか?」


首筋を撫で上げた手が、頬に触れて止まる。
その手にわずかに力が籠って、私は航平と至近距離から見つめ合った。


「……ううん」


この瞳の前では、私は何も誤魔化せない。
自分でも驚くくらい素直に首を横に振ってから少しだけ身を捩って、航平の唇に自分の唇を重ね合わせた。


「私も……今日は航平とずっとこうしてたい」


触れ合わせた唇を動かしてそう呟いた。


それを合図にするように……。


航平は、とびきり甘い野獣になる。
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