常務サマ。この恋、業務違反です
それの何が間違っているというんだ、と思いながら、私は軽く新庄さんを睨んだ。
それでも新庄さんは怯む様子もなく、むしろ呆れた瞳を向けて来る。
「いくら秘書でも、社員じゃなきゃ噂は聞かないのかな。
……高遠さんって、近々アメリカ本社に戻るって噂があるんだよ」
それを聞いて、私は反論を失った。
そう、私は人事部長から聞いて知っていた。
「正直なところ、今までの噂が噂だったし、それまで遊んで過ごすのかな、って前は思ってた。
でもこの間話してみて、そういうタイプじゃないだろうなって感じた」
新庄さんに真面目な顔をして言われると、ぶっ飛んだ言葉にちゃんと意味があったことに気付いた。
「……心配してくれてる?」
上目遣いでそう訊ねると、新庄さんはそっぽを向いた。
代わりに山田さんがテーブルに頬杖をつきながら呟いた。
「そっか……。今の状況じゃ、遠距離恋愛になるか別れるか、答えは二択ってことか」
山田さんが挙げた選択肢に、ズキッと胸が痛んだ。
黙り込んだ私に気付いて、山田さんが慌てたように、ごめん、と身を乗り出した。
「付き合い始めたばっかりなのに、別れるとか不吉なことを……」
「う、ううん」
慌てて浮かべた笑顔がぎこちなかったのは自分でも感じる。
それでも何も言えずに俯き掛けると、新庄さんが、コラッと私に短い言葉を向けた。
「だから焚き付けてるんじゃない。葛城さんはもう一つの選択肢を高遠さんに匂わせればいいのよ」
それでも新庄さんは怯む様子もなく、むしろ呆れた瞳を向けて来る。
「いくら秘書でも、社員じゃなきゃ噂は聞かないのかな。
……高遠さんって、近々アメリカ本社に戻るって噂があるんだよ」
それを聞いて、私は反論を失った。
そう、私は人事部長から聞いて知っていた。
「正直なところ、今までの噂が噂だったし、それまで遊んで過ごすのかな、って前は思ってた。
でもこの間話してみて、そういうタイプじゃないだろうなって感じた」
新庄さんに真面目な顔をして言われると、ぶっ飛んだ言葉にちゃんと意味があったことに気付いた。
「……心配してくれてる?」
上目遣いでそう訊ねると、新庄さんはそっぽを向いた。
代わりに山田さんがテーブルに頬杖をつきながら呟いた。
「そっか……。今の状況じゃ、遠距離恋愛になるか別れるか、答えは二択ってことか」
山田さんが挙げた選択肢に、ズキッと胸が痛んだ。
黙り込んだ私に気付いて、山田さんが慌てたように、ごめん、と身を乗り出した。
「付き合い始めたばっかりなのに、別れるとか不吉なことを……」
「う、ううん」
慌てて浮かべた笑顔がぎこちなかったのは自分でも感じる。
それでも何も言えずに俯き掛けると、新庄さんが、コラッと私に短い言葉を向けた。
「だから焚き付けてるんじゃない。葛城さんはもう一つの選択肢を高遠さんに匂わせればいいのよ」